現在の大学入試では、長文読解が大きな割合を占めており、最重要視されているが(特に共
通テストでは顕著にその傾向がみられる)、その理由は上図のような階層構造の頂点に長文
読解が位置付けられているからであると考える。つまり、長文を題材に出題すれば、語彙
力や文法力も問うことができるということである。
ではその長文読解とは何かについて以下で考察してみる。
・長文読解の次元
次元
低 ①1 文の中の単語、熟語がわかる(語彙)
↓ ②1 文の文構造がわかる(文法、解釈)
↓ ③文意がつかめる(解釈)
↓ ④文と文の関係性がわかる(読解)
↓ ⑤1 つの段落の意味が掴める(読解)
———————高い壁———————————————————————————
↓ ⑥段落の本文中での位置付け、段落と段落の関係性がわかる(読解)
高 ⑦長文全体が真に理解できる(読解)
これまでしてきた英語力の階層構造の話や、長文読解の次元の話が理解できたならば、単
語・熟語・文法の重要性がわかるはずです。それらがなければ入試英語の配点の大部分を占める長文読解や英作文に本格的に挑戦できません。この事実から言えることは、できれ
ば高校 2 年生のうちに、遅くとも高校 3 年生の夏までには基礎(単語・熟語・文法)を固め
ておきなさいということだ。YouTube を見れば単語、熟語、文法、解釈、長文読解とか、
基礎をいつまでにとかなんて腐るほど言われているのでこれ以上はやめておく。
・読解力
ここからは読解力について述べる。これは長文読解の次元で示したもののうち、高次元の
ことができるようになるために必要な能力で、難関大であればあるほど問われやすい。英
語ができない理由の大半は圧倒的勉強量不足だと思うが、大量に勉強したのに英語長文が
できないという場合は読解力が原因であるのではないだろうか。逆に、そこまで大量の量
をこなしていないのになんかあいつ”英語長文“できるよなぁって奴(こういう奴文法問題苦
手がち)には読解力があると思う。では読解力とは何かというと、半分現代文力のことであ
る。英語長”文”、英語とはいえ文章なのだ。簡単な例を示してみる。次の文章を読んでみ
てほしい。
水素自動車にはこのような利点がある。しかし、〜
では、しかしの次の〜にはどんな内容がきそうか考えてみてほしい。
おそらく、水素自動車の欠点や課題が述べられると考えられる。これは長文読解の次元の
④と関連する。1 文目では水素自動車の利点が述べられ、2 文目はしかしで始まっている。
逆説なので利点とは反対のもの、すなわち欠点や課題が述べられると推測できる。2 つの
文の関係性を読み取ることで、後の内容を読まなくてもある程度この後何が述べられそう
か推測することができる。これが読解力だ。これが英語になって、難しい内容になっても
できますか? 文の集合である 1 つの段落の主張が読み取れますか?(⑤) 文と文に限ら
ず、段落と段落になってもできますか?(⑥) 木も見て森も見れますか? そして、長文
全体を真に理解できますか?(⑦) ということ。難関大学はここを問うてくる。しつこいで
すが、これは 1 文が読めることが前提の話です。それすらできなければ土俵には立てませ
ん。難関大の英語が解けるようになりたいなら、英文に対してこういう読解、文章の流れ
についての議論ができるくらいのレベルまでいち早く到達してください。単語熟語文法で
す。
こういう経験をしたことがないですか? 英語長文ができる友達に「なんでこの問題解け
たの?」って聞いたら「んーなんかよーわからんかったけど文脈的になんとなくでいけ
た。」と言われる。そして自分はこう思う。「フィーリング?才能なのかな?いいなぁ、あ
いつは。」本当にテキトーに答えて正解だった場合は除いて、そのフィーリングの裏には実
に論理的な思考があるはずで、それが読解力そのものだと僕は考えている。・速読について
共通テスト英語リーディングで最も顕著だが、他にも私大英語など今の時代の英語入試で
は、速読力が強く求められている。僕自身も共テと私大入試のときは強く悩まされた。
先に述べておくが、絶対に精読→速読の順番でできるようにするべきだと考えている。フ
ィーリング読みは絶対にするな。限界が来るぞ。そしてそれに気づいたときにはもう遅い
ぞと脅しておく。
速読できるようになるためにどうすればいいかをかなり考えた結果、先述した読解力が鍵
を握っていたことに気づいた。文章の構成を理解し、段落ごとの要旨をつかみ、次に何が
述べられるかを常に推測しながら読み進めることで、最短ルートで文章を読み、文章を理
解できる。その結果速読ができる。つまり、速く読み、速く内容を理解できるようになり
たいのなら頭を使って読めということだ。しかし、これは長文読解の次元の中でも高次元
のことをするわけで、日本語ならまだしも英語でこれをやる必要があるから、1 つ 1 つの
英文を読むことに精一杯であっては到底無理だろう。
これまでは文と文の関係や、段落単位のマクロな視点の話だったが、文法・語法の力を使
えば、1 文というミクロな視点で次に続く内容を推測できる。1 つ具体例を示す。
The development of technology through the Industrial Revolution enabled 〜
ここで enabled まで読んだ時点で、The development of technology (through the Industrial
Revolution)が主語で enabled が動詞であることがわかり、enable は enable O to do の形で
「O が〜するのを可能にする」という意味を表す語法があるため、この後は O to do の形
が続くと推測できる。もちろん enable O で「O を可能にする」となり後ろに名詞句が続
くことも考えられる。enable がきた時点で、できるやつは頭の中で、次に目的語がくるな
と考えて、どんな目的語が来るのかを予測している(人類とか?)。さらには、to 不定詞を
警戒しながら読み進めているのだ。皆さん、文法・語法の勉強をつまらない文法問題を解
けるようにするためだけの勉強だと思っていませんか?英語の根幹にある重要な基礎なの
です。頭を使えばそれを大いに読解に応用できます。ですから文法の勉強を怠らないでく
ださい。
文法・語法の力を使って、常に文構造を強く意識して、次に続く語句を推測しながら読み
進めてください。そして読解力を使って文章の構成や主張を見抜き、次に続く内容を推測
しながら読み進めてください。頭を使いましょう。それができるようになってさらに突き
詰めていけば最後は単語で決まります。